現実のような夢

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現実のような夢

「将来かぁ〜」と、終業式の日に渡された進路表を思い出していた。中学2年の夏にそんな話をされても、高校のことなんて…ましてや将来のことなど想像出来ず、まだ何も書けないでいた。 「高校、どこにするか決めたの?」としつこく聞いてくるお母さんに嫌気がさして、散歩がてらに買ったアイスをくわえながら公園へとぶらぶら歩いていた。 何気なく辺りを見渡すと、横断歩道を一人で渡っている男の子が視界に映った。……それを、何故だか「危ないな」と思った。 見たところ6、7歳の子だ。それにきちんと青信号を渡っている。何も危ないことはない、よくある光景のはずだ。なのに、心臓がドクドクと大きな音を立て始める。汗とは違う何かが、背中をツーっと伝った。 その時、パッと視界が白くなったと思うと、目の前の横断歩道に赤い車が突っ込む光景が見えた。直前でコケたらしい男の子はその小さな身体を宙に浮かせ、数メートル先で力なく横たわる。辺りが徐々に赤く染まっていった。 現実とは違うと分かるのに、それがあまりにもリアルで、私は悲鳴を上げることすら忘れた。
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