看守 天気雨

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看守 天気雨

 今日も朝から晩まで、飽きもせず雨が降る。  今日の雨は、あの囚人の言葉を借りるとすれば"天気雨"、だろうか。ふと、鉄格子の向こうにうっすらとした七色の橋を垣間見た。  365日降り続ける雨に、そろそろ俺も麻痺してきたらしい。あの囚人のように、今日の雨を予想することに楽しみを見いだしつつある。  ここに配属されてから3年。あの囚人との付き合いも3年。声を聞いたこともなければ、向こうが俺という人間を認識しているのかさえ怪しい。  まあ、特に気にすることではないけれど。  ただ、あの囚人がここを出ることがあるならば、その日ぐらい快晴でもいいのでは、と、そう思う。
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