看守 火番

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看守 火番

 今日も、看守の俺に与えられたただ一つの業務をこなす。  コツコツと軍靴を鳴らし、牢獄へ向かう。手に持っているのは、囚人の部屋を照らす唯一の光である松明。  目が見えていない相手に必要なのか、と毎度思うが、どうも光を感知するぐらいは出来るらしい。なんせ、光が灯る場所になんとなく、囚人の意識が向いているような気がするのだから。  ほら。俺が牢へ入ると、病的なくらい白い肌で、目鼻立ちの整った顔がこちらを向く。  しかし、まるで見えているようにこちらを凝視するものだから、穴が空きそうだ。けれども、何か言葉を投げ掛けてくるわけでもないので余計達が悪い。  ほんの少しくらい喋ったって、罪を重ねるわけでもないだろうに。  それとも、本当は話すことが出来ないのだろうか。  光を灯し終えてしまえば、囚人の意識はスッと外へ向いてしまう。…特に今日みたいな霧雨の日は。見えない瞳でキラキラと外を眺めている。  霧雨など嫌いだ。  じめじめと大地を濡らし、湿度が高いせいで俺の不快値数は底無しだ。心なしか嬉しそうに外を眺める囚人の気が知れない。  早く止んでしまえばしまえばいいのに。  霧雨も。  この変な不快感も。
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