〈第6落下地点〉

9/12
前へ
/89ページ
次へ
心臓が、ひどく震えた。 芽衣子ちゃんに、好きと言ってもらえた。 嬉しさ半分、驚き半分。 信じられない気持ちの方が大きくて、思わず聞いた。 「もう…お兄ちゃんのフリしなくても…いいですか…?」 「…はい…」 「抱きしめても…いいですか…?」 「…はい… ふふっ…相田さん…どうして敬語?」 やっと見れた、芽衣子ちゃんの笑顔。 この笑顔が好き。 遠慮がちに…芽衣子ちゃんの背中に手を回して、あの時と同じように…両腕に閉じ込めた。 小柄で…華奢に見えるけど…ほどよく柔らかくて心地いい。 芽衣子ちゃんは両手を俺の鎖骨辺りに添えて、片頬をぴったり添えた。 「風邪…うつってない…?」 「はい…大丈夫です… 昨日、ジャケットとか掛けてくれたの、相田さんでしょ…? あったかかったです…」 「でも…昨日…キス…したでしょ…?」 「!!…」 芽衣子ちゃんが目を見開く。 「したでしょ…?」 少しいじわる気味に聞くと、 「…はい…」 消え入りそうな、芽衣子ちゃんの声。 くっくっと小さく笑って、続けた。 「実をいうとね…熱であんまり覚えてなくて。 夢だったのかな、現実だったのかな、って… もし本当だったら…芽衣子ちゃんに風邪がうつるって思ったの…」 「…うん…」 そっと…芽衣子ちゃんの頬を両手で包んで、上を向かせた。 「…ね… …俺から、したい… …いい…?」 「…… …うん… …して…?」 そう言った芽衣子ちゃんは 目に涙を滲ませて 頬に驚くほど熱を持っていた …
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加