〈第6落下地点〉

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「…んんっ…」 今度は自分が声を漏らす番だった。 芽衣子ちゃんの唇に、懸命な舌使いに酔いしれる。 長いこと舌を絡め合い… ちゅぱっと音を立てたと同時に、はあっ、とお互いに息をついた。 「やば…止まらない…かも…」 「……」 返事の代わりに…俯きながら小さく頷く芽衣子ちゃん。 その柔かな黒髪を何度も撫でて、頬にくっつけた。 「芽衣子ちゃん… まだ…居れる…?」 耳元で囁くと、芽衣子ちゃんは俺の胸元辺りの服をきゅっと握って…首を横に振った。 「ごめ…なさい… 飛行機…たまたま空席が出て、昨日の内にチケット変更出来たんだけど… …今日の…朝9時なの… …もう、戻らないと… ヤスコに無理言って、車で空港に送ってもらうことになってるから…」 部屋の壁掛け時計を見る。 6:08。 芽衣子ちゃんを抱く腕を緩めて、そっと手を引いて布団の側に座らせた。 不思議そうに俺を見る芽衣子ちゃんを横目に、枕元に置いてあった自分のケータイを手にした。 ピッ、ピッ… ひとしきり操作して、数十秒待つと、 ♪~、と、短く着信音が鳴った。 画面を確認して、それを芽衣子ちゃんに見せた。 画面と俺を順番に見て…驚き顔の芽衣子ちゃん。 「許可、もらったから… …もうちょっとだけ… …俺と居て…?」 そう言って 再び芽衣子ちゃんを抱きしめて そのまま 布団に倒れ込んだ 俺の手からこぼれ落ちたケータイの画面には “しょうがないね 7時半にそっちに行くから 感謝しなさいよ” 靖子からのメールが映し出されていた …
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