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会社のトラブルで今年の夏はバカンスできなかった天王寺家の長男天王寺(なお)(まさ)は、夏の終わりに少しでも癒されたくて、祖父の家に戻ってきていた。 しかし、祖父は長期ご不在だった。 けれど目的は、三男の尚人に会うため。とくに問題もなく尚政は一人くつろいでいた。 どういうわけか、祖父も長男も次男も三男を可愛がっているからだ。 リビングで読書をしながら尚人の帰りを待つが、なかなか帰宅してこない。 何度も外へ視線を向けては、帰ってくる車が見えないか探していた。 そうこうしてるうちに、見覚えのある外車が見え、尚政は、小さなため息をつく。 「政兄、おかえり」 「ああ、ただいま」 待ち人ではない次男が帰宅し、とびきりの笑顔で迎えてくれたが、なんとなく寂しかった。 「もう、あからさまにがっかりしないでよぉ」 態度で期待されてなかったことが分かり、尚希は少しむくれてみる。 「そんなことはない」 「尚ちゃんなら、もうすぐ帰ってくるよ」 「なぜわかる?」 「今日は姫ちゃん送ってくって言ってたからね」 「姫ちゃんとは?」 初めて聞く名前に尚政は首を傾げてみせた。尚人にそんな名前の友達がいただろうかと。 不思議な顔をしてみせた尚政に、尚希はにこにこと近づくとソファーの隣に座った。 「尚ちゃんの大事な人」 人差し指を立てて、ウインクつきで尚希が言えば、尚政は少しだけ目を開く。
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