虎穴虎子

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「知りたいですか?」 湊陽也がテーブルに肘を付いて僅かに身を乗り出した。 餌に食いついた魚を見る様に、その目には鈍く光るものがある。 まんまと誘いに乗ってしまったらしい。 「いえ、結構です…………本題に入りましょうか」 気づけば湊陽也のペースに乗せられている。 こんなに思う様にいかない相手は初めてである。 これはもう適当な保障内容で設計書(プラン)を作って提案してしまおう。 「ご結婚はされてますか?」 「志岐さんはご結婚されてるんですか?」 「……………………」 iPadを操作する手が思わず止まってしまう。  これはもうすでに、      保険に入る気はない? 保険加入は口実で、ただ単に話す機会が欲しかったのかもしれない。 時折、そう言った下心込みの加入希望者がいるのは事実だ。 今日は急なアポイントだった為に単独で出向いたが、大概はペアで動く。 相手が警官だっただけに、そう言う可能性を考えていなかった。  …………マズったな、これは。 でも、あり得るのだろうか。 凡そ女を口説こうとする表情でなければ、この手管は余りにも捻くれている。 それとも、他に何か画策があるのか?
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