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ホールディングス化した時にかなりの株の売却益があったと聞いているし、今でも、父親は経営職階。株式も全て売却したわけではなく、一部保有しているはずだ。
当然、資産はそれだけではないはずで。
葵ー。お前とんでもないのを引っ張ってきたって分かってるか…?
「まあ、でも今は会社は家族経営ではないですし、僕も一介の会社員ですよ。」
「跡、継がれないんですか?」
「株式会社ですから。」
株主の意向、は対外的なもんだろうが、どこも!
「あと、仕事、好きなんですよね。」
「紳士服、ですか?」
「それは最近。先日までは婦人服の買付をする、バイヤー室にいました。その前は他社にいたし。」
「他社、ですか?」
「ええ。商社にいました。だから、物動かすのが好きなのかもって思ってるんですけど。」
この人、好きかも。
成嶋は思った。
おそらくは、仕事などしなくても食べていけるはずだ。それでも、一介の会社員として仕事をしている。
学ぶことはたくさんあるはずだ。
「買付とか、面白そうですよね。」
「うん。すごく楽しかったですね。海外とか行かせてもらいました。紳士はまたレディースとは違う楽しみがあるなぁ。」
「今日は仕事はしないつもりです。」
「はい。」
突然の成嶋の宣言に、成田は面白そうな顔をしている。
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