『秘書は奔走する』

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笑い事ではなく、ダイニングから、メインのバスルームまで、なかなかの距離がある。 主寝室にも、シャワーブースがあり、もちろんゲストルームにも。 「主寝室、使います?」 「使うだろ。人が来たりしたら。」 ここで、寝てみたい? 急に肩を抱かれて、貴広に耳元で囁かれる。 「ひゃんっ!だ、大丈夫!大丈夫ですっ!」 「あはは、そんなに驚かなくても。まあ、そのうち使うよ。」 「ん。」 「どうした?」 「うーん、やっぱり、資産家なんだなって。」 「まあ、経営者だからなぁ。けど、それを補って余りあるくらいの変な奴、にお嫁にきてくれるのは、凛くらいだと思うぞ。」 自分でそう言って、笑っている。 後ろから、凛をきゅっと抱き締めている貴広を、凛は見上げた。 ヒールをはいていない今は、背伸びしても届くのは貴広の耳の下辺りだったが、凛はちゅ、とキスをする。 「なんだ?」 「なんとなく。」 こんな広いところに一人では、凛ならば耐えられない。 パーソナルな部屋を欲しがった意味が分かる気がするのだ。 「なんだ、ここでしたいなら、そう言えばいいのに。」 「やっ…ちが、違うってば…」 綺麗なカバーのかかったベッドに抱き上げられる。落とされたそこは、シルクだろうか、ツルツルとした感触。 両手を絡め取られて、唇が重なる。 「っ…あ…、」     
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