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貴広はつい、ここにいない人を思って、ふ、と微笑んでしまった。
そして、こうしてお互い気を使いながら、家族が増えるのか…と実感していた。
総一郎自身は会合でも見かけたことがあり、会議でも見かけたことはある。
印象としては控えめな、けれど、よく出来る役員。
まさか、公務員、それも警察官上がりとは思わなかった。
見た目が若いせいか、定年退職しているとは思わなかったので。
幹部としての、民間企業への転職も2度目と聞いている。仕事だけではなく人柄も認められているのだろう。
それは、こうして、接していても分かる。
居心地の良さは、凛といる時と確かに似ている。
けれど、総一郎にはもっと練られている何かがあって、安心感があるのだ。
実は貴広がそう感じることは珍しい。
「凛は、どうかな?」
「元気に仕事に行っていますね。」
そう回答して、あ、と気付く。
「すみません。同じ会社ですよね。」
「ああ。元気なら、いい。」
「僕が忙しくて、あまり相手をしてあげられないので、申し訳ないかな、と思います。でも、凛さんはいつも、支えてくれている。気持ちが違いますね。家に帰るのも楽しみになりました。」
「それなら、いいんだ。お互いにないものを埋めあったり、分け合ったりするのが、家族だから。月並みだけれど。」
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