6人が本棚に入れています
本棚に追加
高3の冬だった。
僕は、昼休みになるとよく屋上で空を見上げていた。
何となく。それが日課だった。
それは、滝沢さんも同じだった。
他クラスの美術部に所属する彼女。
空の絵を描くのが好きらしい。
顔見知りになって、少しづつ話すようになり。
僕は天体の話をした。
彼女が凄いって、褒めてくれるのが嬉しくて、
余計のめり込んだ。
そして嬉しそうに聞いてくれるから、つい一方的に喋ってしまう。
もっと、滝沢さんの事。
知りたかったな。
まあイイか……。
また、明日もあるからと。
「天体観測をしよう」って誘いたかった。
けれど、
思いは伝えられなかった。
年が明けた新学期。
滝沢さんは、消えた。
噂では、親が負債を抱えて夜逃げしたらしい。
僕は、あの時、
いや、いつも自分の事ばかりで、
何もしてあげられなかった。
今も、これからも、きっと、
ずっと、小さな棘が刺さったまま、
たまに疼くんだろうな。
せめて元気で、幸せであって欲しいと願う。
彼女の影を追うのは辞めた。
別々の道を歩んでも、いつかまた巡り会える。
この星も繋がってる。
数多ある天体の中、小さな塵みたいでちっぽけな存在だけど、生を持って産まれた奇跡。
星座のように、何か意味があって、見えない糸で繋がっている。
そんな事を信じて、天文学へ進路を決めた。
懐かしい。
久しぶりに会えた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!