恒星のスペクトル

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高3の冬だった。 僕は、昼休みになるとよく屋上で空を見上げていた。 何となく。それが日課だった。 それは、滝沢さんも同じだった。 他クラスの美術部に所属する彼女。 空の絵を描くのが好きらしい。 顔見知りになって、少しづつ話すようになり。 僕は天体の話をした。 彼女が凄いって、褒めてくれるのが嬉しくて、 余計のめり込んだ。 そして嬉しそうに聞いてくれるから、つい一方的に喋ってしまう。 もっと、滝沢さんの事。 知りたかったな。 まあイイか……。 また、明日もあるからと。 「天体観測をしよう」って誘いたかった。 けれど、 思いは伝えられなかった。 年が明けた新学期。 滝沢さんは、消えた。 噂では、親が負債を抱えて夜逃げしたらしい。 僕は、あの時、 いや、いつも自分の事ばかりで、 何もしてあげられなかった。 今も、これからも、きっと、 ずっと、小さな(とげ)が刺さったまま、 たまに(うず)くんだろうな。 せめて元気で、幸せであって欲しいと願う。 彼女の影を追うのは辞めた。 別々の道を歩んでも、いつかまた巡り会える。 この星(僕たち)も繋がってる。 数多(あまた)ある天体の中、小さな(ちり)みたいでちっぽけな存在だけど、生を持って産まれた奇跡。 星座のように、何か意味があって、見えない糸で繋がっている。 そんな事を信じて、天文学へ進路を決めた。 懐かしい。 久しぶりに会えた気がした。
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