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出社当日。
それでもウジウジとずっと悩んで、
おずおずとその日を迎えてしまった。
『シャルル』はテナントビルの16階と17階にあった。面接会場として通された会議室のフロアは16階だった。今日、僕は初めて17階のフロアに足を踏み入れる。
エレベーターを降りると、すぐにエントランスに出くわした。シックなウォールナット調の自動ドアと柱。その両側の壁一面は、艶やかなモザイクタイルが張り巡らせてある。暗めの青が基調なのだけど、インディゴ、ラピスラズリ、プルシャン……、なかには明るいゼニスブルーと、色とりどりの青をこの壁いっぱいに詰め込みました。みたいなアート感がある。
受付カウンターの背面中央には『Charles』と書かれたモダンで幾何学的なデザインのロゴが、立体的な間接照明で大きく浮び上がっている。
凄い……なんて言うか…まるで……
(宇宙みたい…)
「宇宙みたい…」
声の主と同じ言葉を感嘆してた。
はっと我に返ると隣に立ってるのは、
面接の時の女性だった。
「あなた、面接の時の……」
驚いた顔をする。
はい。誰よりも一番そう思ってるのは僕です。
やっぱり実際、そうですよね。
と苦笑いしながら、
「あ、どうも。坂島 天斗と言います。よろしくお願いします。今日から、ですよね」
「はぁ、よろしく、お願いします……仁藤です。仁藤 日晴」
なんか距離、置かれてる気がするんだが……
既にメンタル削られる。
受付に置かれた受話器を上げて、名前を告げる。暫くした後、担当者が顔を見せた。
もう別次元に迷い込んだのかも、とフラついた。
と言うのも、どこかのミスユニバース的な、もしくはカリスマモデルばりの美人が登場したからだ。
肩と鎖骨のラインを大胆にカットしたケーブル編みのワンピースセーター。落ち着いた温かみのあるブラウンが『癒し』というよりむしろ、彼女の大人の色気を際立たせてるよう。今流行りのゆるふわバルーンな袖を少し捲って見える腕と、上品にデザインされたスリットの隙間から覗く足はすらりと細くてしなやか。
スレンダーなのに理想的な胸の膨らみは、男なら必ず目がいってしまう事だろう。
「キレイなひと……」
(仁藤さん、心の声が漏れてますよ)
と、思いつつも激しく同意。
屈託のない笑顔で「ありがと」って言われ、仁藤さんはキュン死しそう。
女性が惚れる女性は本物だと思う。
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