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「烏丸 千秋です。あなた達の教育指導を担当します。よろしくね 」
そしてウィンク。
一体その悩殺スキルは何処で身につけたんですか?それとも天性のなせる技ですか?こんなサキュバスみたいな人から、魅了されつつナニを指導されるというのですか?
「君がテント君ね。噂は社長から聞いてるわ」
「社長……?」
「そう。面接の時、会ってるでしょ?なんだか面白い子がいたって、喜んでたわよ」
「へ?あ……社長。え?」
「あんたそんな事も知らなかったの?」
仁藤さんが小声でツッコむ。
「社長自ら面接して採用するの有名よ。ホントよく受かったわね」
「ご、ごめん……そんな偉い人だと思ってなかった…」
仁藤さんの顔が引き攣る。なんかのスイッチ押したらしい。
「は。マジで?……信じらんない。あのアプリの常識を変えた伝説のクリエイター。加賀杜 慎也を知らずに?……この会社受けたわけ」
「……はい……」
「正気?正気なの?本来私達がね、気安く話できるような人じゃないの!神様なのよ!まったく。あなたはいつも」
「二人とも仲がいいのね。良かったわ」
(いえ、ぜん…ぜん)
「いえ!全っっ然!」
また、ハモってしまった。
やはり、場違い感が否めない。
本当に僕はこの会社で、上手くやっていけるのか……
少なくとも仁藤さんは『シャルル』にとって即戦力で、採用されて当然なんだと思う。
面接の時だって、専門学校から前職の経歴まで申し分無さそうで、堂々と自信ありげにアピールしてた。同い年なのに、ずっと培ってきた技術はきっと凄いんだろうな。
僕が言うのもなんだけど……
一方で、地方の名の知れてない大学の天文学科なんて、卒業したからと言って、就活になんの有利にもならない。机上の空論ばかりで、頭でっかちのただの天文オタク。そんな奴欲しがるなんて、普通に考えたら、いないよな。
仁藤さんが羨ましい。
僕には、何も無いから。
自信持って誇れるもの。
烏丸さんから各セクションの案内されつつ、受注してるプロジェクトの説明されると、自分の居場所が想像出来なくて凹んだ。
紹介された職場の先輩方は皆優しくて、『リア充してます』みたいな生き生きした目が眩しすぎて直視できなかった。
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