産まれたて親父

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 あくる朝、俺の朝はもう出社時間だというのにいびきをかいている親父を起こすところから始まった。お袋と妹は昨日の怪我で深夜に救急車に運ばれて行った為自分が起こすしかなかった。  俺が親父の体を揺すると、親父はまた泣き始めた。しかし働いてもらわなくては困る。お袋は専業主婦だし、俺も妹もバイトなどしたことはない。我が家がこれまで滞納した 生活費、学費、習い事の月謝、旅費等を、親父には稼いでもらわなければならない。  俺は嫌がる親父に構わず、スーツを着させる、というよりはサイズが合わなかったので被せ、鞄を持たせる、というよりは持とうとしなかったので乗せ、玄関から送り出した。     そして一息付くと、授業が二限目からだった為、もう一眠りすることにした。  しかし俺の二度寝はインターホンが鳴ったことで妨げられた。ドアのガラス穴から覗くと、お隣さんが親父を抱えている。 「どうされました?」  慌てて表に出ると、お隣さんは立腹していた。 「どうしたもこうしたもありませんよ。ほら」  と、お隣さんが指差した先には、家の前の通学路で小学生、中学生たちが立ち止まってこちらを見ている。 「お宅のお父さんのせいでこの人だかりですよ。人様の悪口言いたくありませんがね、朝から外で大の大人が大声で泣いて、みっともない」  ひたすら平身低頭だった。俺は自分からは一向に謝ろうとしない親父の頭を持って下げ、きっと一人では会社に行かないだろうと判断し、自分の荷物をまとめ、着替え、親父の会社に寄ってからそのまま大学に行くことにした。  親父の会社に行くのは初めてだった為、携帯で住所を調べ、電車で向かった。満員電車でまた泣く親父に、 「連れてくの今日だけだからな」  としきりに言った。  会社に到着すると、親父の秘書らしき人が出迎えてくれた。そして親父を受け取り奥へと入って行った。それを見送り、俺は大学へと向かった。朝から大変な目に遭った為、既に俺はクタクタだった。
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