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営業が終わって会社に戻っていた。特に焦ることもないだろうと、先方の最寄り駅に真っ直ぐ向かわずに、バスに乗って、会社まで一本で行ける電車の停車駅まで行くことにした。
その内見つかるだろうと適当に歩くと目的の停留所がもの寂しい様子で立っていた。時刻表を見ると、後10分ほどかかる・・・。
わざわざ気候のことを考えなくても済むような、穏やかな気候だった。車は通らず、時折鳥が囀るのが電線から聞こえて来るくらいだった。そしてその声はわざわざ仰ぎ見るほどの切迫感を含んでいなかった。
道路を挟んだ向こう側にはアパートがあり、歩道からアパートの土地に続く石畳みの短い階段は、フェンスの間を抜けてアパートの各棟の間の広い道になっていた。そこにおもちゃの車に乗った幼い子供と母親が散歩をしている。丁度妻子と同じくらいの年齢だ。小学生は今頃学校だろう。
他に見るような物はなかった。凪だった。
気が付くと俺は乗り込んでいた。しかし乗り込んでいたのはバスではなく、将来への漠然とした不安だった。俺は心を「俺の人生はこのままでいいのか?」という疑問に支配されていた。俺は成す術なく漠然とした不安に運ばれていた。
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