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黄昏の街でみんなと別れて、学校に戻るように歩く。来た時と同じ歩道を歩きながら、なんだか足が重いことに気づく。
やっぱり無理しちゃったかな……今日は。
みんなと同じことをしているだけなのに。少しいつもと違うことをしただけで、体がいうことをきかなくなる。
こんな体だから、両親もいまだに私のことを心配している。もう高校生なのに。亜希ちゃんだって私の病気のことを知っているから、帰り道を心配してくれたんだ。
いやだな……ため息のような息を吐く。
いつまでも周りから気を使われている自分が、情けなくて嫌になる。
そんなことを考えながら歩いていたら、なんだか頭がくらくらしてきた。近づいてきた学校の校舎が、ひどくいびつに歪んで見える。
学校の外壁に手をついて、立ち止まった。息苦しさを覚えて胸を押さえる。
すぐ先に見える校門の前に、一台の車が止まるのが見えた。深く息を吸ってそれを吐きながら、車から降りてくる人影を見る。
「じゃあねー、お姉ちゃん」
「またねー」
車の中から、小さな子どもの声が聞こえた。車から降りた制服姿の女の人が、車に向かって笑顔で手を振っている。やがて車は静かに走り出し、女の人を残して去っていった。
私はそのシーンを目で追ったあと、壁にもたれるようにうずくまってしまった。
「あ……」
校門のほうから声がする。
「どうしたの? 大丈夫?」
私に駆け寄ってくる足音。立ち止まったローファー。
ああ、私はまた、誰かに迷惑をかけてしまう。
「あ、あなたは……」
私は浅い息を吐きながら、そっと顔を上げる。
「あなた、この前の子」
そう言って私の背中に優しく手を当ててくれたのは、あの美織さんだった。
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