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「ふわー、食った、食った」 「圭太、あんたどんだけ食べたのよ。信じられない」  私たちはケーキやタルトをお腹いっぱい食べて、店を出た。岸本くんは苦しそうにお腹をさすっている。 「でも私もお腹いっぱい。もう夕飯はいらないかも」 「だね。当分ケーキは見たくない」  亜希ちゃんと笑い合う私に、岸本くんがしみじみと言う。 「けどまさか重森さんと一緒に、ケーキやタピオカ食える日が来るなんてなぁ……」 「は? どういう意味よ、それ」  にやにや笑っている岸本くんを、亜希ちゃんが横目で見る。 「だって一年の頃は、俺たち重森さんに話しかけることさえできなかったんだぜ。下手にしゃべりかけたりしたら、泣いちゃいそうな雰囲気だったから」  え、私、そんなふうに思われていたんだ。戸惑う私に岸本くんが笑いかける。 「いや、別に変な意味じゃなくて。重森さん、ひそかに人気あったからさ、みんな話してみたいとは思ってたんだよ。この前タピオカ食いに行けて、島田と高橋も内心めっちゃ喜んでたはず」 「へぇー、すごいじゃん、砂羽」  亜希ちゃんがひやかすように肘でつついてくる。私はますます恐縮してしまう。  私は何にもすごくなんてない。しゃべったことのない人に、自分から話しかける勇気がなくて、いつもじっと黙っているだけ。  そんなことを話しながら歩いていたら、あっという間に分かれ道まで来ていた。亜希ちゃんと岸本くんはここから駅へ、私は学校の方へ戻るのだ。 「砂羽、一人で帰れる?」 「俺たち送っていこうか?」  私は慌てて首を振る。 「大丈夫だよ。この前みたいにはならないから」 「でも……」  亜希ちゃんが心配そうな顔をする。友だちにこんな表情をさせてしまう自分が情けなくなる。 「ほんとに大丈夫だから。心配させちゃってごめんね?」 「ううん。じゃあほんとに気をつけて帰るんだよ」 「うん」  亜希ちゃんが私に手を振る。岸本くんが「じゃあな、砂羽ちゃん」なんて言ってくれる。  私も手を振って二人を見送った。駅へと続く商店街の中、いつものようにふざけ合いながら、二人の姿が人ごみに紛れていく。  なんだかんだ言って、あの二人も仲がいいんだよなぁ……。  そんなことを思いながらゆっくりと方向転換した時、私はハッと気がついた。
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