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ゆっくりと歩いて家に帰った。猫神さまの神社に着く頃、あたりは薄暗くなっていた。お腹がいっぱいでちょっと苦しかったけど、この前のように具合が悪くなることはなかった。
『今日は遅いけど大丈夫?』
心配したお母さんから、スマホにメッセージが届いた。
『大丈夫だよ。今猫神さまのとこ。もうすぐ帰るよ』
『了解。気をつけてね』
スマホをポケットにしまうと、鳥居をくぐって手を合わせた。
「ただいま、猫神さま。今日も無事学校に行くことができました。ありがとうございます」
そう感謝しながら、頭の中に遠野くんと美織さんの姿を浮かべてしまった。
私は慌てて首を振り、余計な記憶を振り払う。だけど――
「私もいつか、誰かを好きになってみたいって……そう思いました」
心の中を猫神さまに打ち明けたら、なんだか急に照れくさくなった。
「あのっ、今のは何でもないですっ、ごめんなさい! 忘れてください!」
ぺこりと頭を下げて目を開くと、足元で三匹の猫たちがきょとんと私のことを見上げていた。
「聞いてた? 今の……」
苦笑いして猫たちの頭を撫でる。
「恥ずかしいから、誰にも内緒ね?」
私が言ったら、三匹の猫が返事をするように「にゃー」と鳴いた。
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