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これから部活に行くという亜希ちゃんとは、教室の前で別れることになった。
「あ、圭太がさ、『スイーツクラブ』はまっちゃったみたいで。また行こうって言ってたよ」
「だったら今度は、二人で行っておいでよ」
「えっ、圭太と二人で?」
「だって付き合うんでしょ? 私がいたらお邪魔じゃない?」
「そんなことないっ! 砂羽ー、私を見放さないでー。私、付き合うのって、初めてなんだよー」
亜希ちゃんはそんなことを言っているけど、私だって付き合ったことなんてない。
でも絶対岸本くんは、亜希ちゃんと二人で行きたいはず。
「とりあえず部活行っておいで。がんばってね」
私はそう言って亜希ちゃんの背中をぽんっと押す。
「うん、がんばるよ。砂羽は気をつけて帰ってね」
「うん、ありがと」
二人で手を振って「ばいばい」と別れた。
ジャージ姿の亜希ちゃんは、飛び跳ねるようにして廊下を走っていく。
そんな亜希ちゃんの背中を見送りながら、私はなんとなく考える。
彼氏がいる毎日って、どんな気分なんだろう。
好きな人もいない私には、想像もつかないけれど。
亜希ちゃんの姿が見えなくなると、私は回れ右をして昇降口に向かった。
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