47人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
音楽室から流れる吹奏楽部の音を聞きながら、下駄箱の前に立った。そして靴を履き替えようとして、その姿に気づく。
「あっ……」
「あれ?」
目の前で背中を丸めて、靴を履き替えていたのは遠野くんだった。
「重森さんじゃん。今帰り?」
「うん……遠野くんも?」
「そう。めずらしいね、こんなところで重森さんに会うの。俺たち同じ帰宅部なのに」
そう言えばそうだ。同じクラスになって何日も経つのに、遠野くんとここで会うのは初めてだった。
「遠野くんは……一人なの?」
私はあたりを見回して聞く。遠野くんの周りには、いつも誰かがいるような気がしたから。
「ああ、圭太たちは部活だし」
「美織さんも?」
「うん。俺はいつも一人でさみしく帰ってんの」
笑いながらそう言って、遠野くんが私を見た。目が合ってしまって、どうしたらいいのかわからなくなる。
「一緒に帰る? 門のとこまでだけど」
いたずらっぽい顔をして、遠野くんが私に言った。
最初のコメントを投稿しよう!