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 音楽室から流れる吹奏楽部の音を聞きながら、下駄箱の前に立った。そして靴を履き替えようとして、その姿に気づく。 「あっ……」 「あれ?」  目の前で背中を丸めて、靴を履き替えていたのは遠野くんだった。 「重森さんじゃん。今帰り?」 「うん……遠野くんも?」 「そう。めずらしいね、こんなところで重森さんに会うの。俺たち同じ帰宅部なのに」  そう言えばそうだ。同じクラスになって何日も経つのに、遠野くんとここで会うのは初めてだった。 「遠野くんは……一人なの?」  私はあたりを見回して聞く。遠野くんの周りには、いつも誰かがいるような気がしたから。 「ああ、圭太たちは部活だし」 「美織さんも?」 「うん。俺はいつも一人でさみしく帰ってんの」  笑いながらそう言って、遠野くんが私を見た。目が合ってしまって、どうしたらいいのかわからなくなる。 「一緒に帰る? 門のとこまでだけど」  いたずらっぽい顔をして、遠野くんが私に言った。
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