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「猫神さま、今日も私のことを見守ってくださり、ありがとうございました」  学校帰り、猫神さまの前で手を合わせる。目を閉じて神さまに祈りながら、今日一日のことを思い返す。  遠野くんにキャンディーをもらって二人で食べた。そのあとも誰もいない教室でおしゃべりをして……結局課題が全然できなかった。  だけど今日、遠野くんに少しだけ近づけた気がする。 「にゃー」  足元で猫の鳴き声が聞こえてはっとした。目を閉じて手を合わせたまま、首を横に勢いよく振る。 「ごめんなさいっ、猫神さま。関係ないこと考えてましたっ」  神さまに謝ってから目を開くと、いつもの黒と白と茶色の猫が私を見上げ、にゃーにゃーと激しく鳴いている。 「あなたたちも怒ってるの? 私が神さまの前で遠野くんのことを考えてたから」  猫たちは私に抗議するかのように鳴き続けている。私が困って「ごめんね」と頭を撫でると、ごろんと転がって喉を鳴らし始めた。私はそんな猫たちのお腹を撫でながら、また遠野くんのことを思い出す。 『好きな人ができたらさ、俺にこっそり教えてよ』 「好きな人かぁ……」  私に好きな人なんてできるのかな……。  気づけばまた猫がにゃあにゃあ鳴き始めたので、私はもう一度「ごめんね」と言って立ち上がった。 「また明日も来るからね」  三匹の猫はまだ鳴いている。私はそんな猫たちに背中を向けて、境内を後にした。
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