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「よっすー!おまたへー!」
改札を抜けた能天気そうな女が、やたらフレンドリーに声を掛けてきた。
ちょい化粧濃い目のショートボブ。目元にある泣き黒子がチャームポイント(本人談)。
こいつは明科笑里。
またの名を『魔法少女リヒティブルーム』。
世界を守る光の使者で、使者達を総括する聖魔法協会の一員だ。
わたし達とは不倶戴天の敵…なんだけど、同い年な上に長い付き合いだから仕事終わり(=対決後)は一緒に飲みに行くぐらいには仲が良い。
因みに、今日の飲みはこいつのお誘い。なんでも、話したいことがあるらしい。
「お疲れ。なに、ご機嫌じゃん」
「まあね。とりあえずどっか入ろ。お腹空いちった」
わたし達は駅から少し歩いた所にある、創作ダイニングの居酒屋に足を運んだ。
暖簾の付いた個室に通され、わたし達はお酒と料理を適当に注文した。
「んじゃ、とりあえず乾杯」
「かんぱーい!」
グラスを軽く当て、わたしはハイボールを、笑里はビールを一気に仰ぐ。
「はぁ…あーもうマジ疲れた…」
「あはは、お疲れお疲れ。あたしもヤバイよ。肩めっちゃ重いもん。ステッキ振るのも体力いるわ」
「解る。わたしもさ、サーベル上げる度肩パキッて鳴るの」
わたしの専用サーベル『トルナードローゼス』。
幹部昇格祝いに本部から支給された特注品だけど、あのサーベルけっこう重いのよね。
振り回すと次の日筋肉痛確定だし。昔は全然平気だったのになぁ。
「つーか、薫子ビールじゃないの?ハイボール好きだったけ?」
「こっちの方がカロリー少ないんだって。雑誌で読んだ」
「へぇー気にしてるんだねぇ」
「あんたも気ぃ遣いなさいよ。ビール腹の魔法少女なんて洒落にならないわよ」
「やめて。言わないで」
笑里が真顔になったので、わたしは話題を切り上げた。
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