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覚醒
目を覚ますと、私は先程と同じ別邸のベッドの上だった。
ーまた夢の続き?ー
あたりを見回すと、一人の男性が立っている。
「気がつかれましたか。」
「恭孝様……?」
恭孝さんによく似ているけど、違う男性が近づいてくる。
恭孝さんではない事はわかっているのに自分の口が勝手に動く。
さっきの夢の時のような、上から実体を持たずに眺めるのとは違って、自分の体のがあって声も出るのに、まるで何かに乗っ取られたように体が勝手に動いて、自由に動く事のできない事に焦りを感じた。
「恭孝様……。」
私の口が勝手に喋りだす。
「もう一度、もう一度お会いしたいとずっと願っておりました。」
自分の目から涙が流れる。
「一度でいいから私の口から、私の言葉でお伝えしたいと……。
ずっと……ずっと、小さい頃から私の心の中には恭孝様でいっぱいで……。
だからこちらに一人住むようになっても寂しくはありませんでした。
それでも恭孝様がこちらにいらっしゃると嬉しかった。
ありがとうございました。
私はずっと幸せでございました。」
それだけ言い終わると、ふっと意識が遠のいていくのがわかる。
その中で、
ーさっきの言葉は貴子さんが亡くなる前に恭孝さんに伝えたかった言葉だったんだー
そう直感的に思った。
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