第一幕:子供の事情

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「そうじゃないんだ。信じたいんだよ!俺だって居ない事くらいわかってる!空を飛ぶそりに乗った爺さんが?寒風吹きすさぶ中世界中を回って、何億人いるかもわからない子供の所に一晩で贈り物を届けるだって?!馬鹿げてる!そんなことできる訳ないじゃないか!」  早口でまくしたて、言葉にならなかった分の感情が両まなじりから次々あふれ出すジャスティンの姿にニネットは胸を詰まらせ、自分の鼻もひくつかせていた。  「そんな馬鹿な事ありゃしないって事くらい俺だってわかっているんだよ!何もおもちゃが欲しい訳じゃない!でもさ!でもさぁ!」  感極まった少年は一度そこで言葉を詰まらせた。そして、胸のつかえを絞り出すかのように言った。  「居たって良いじゃないか!裕福とか、貧しさとか、そんなの関係なく、みんな平等に与えられる幸せがあっても良いじゃないか!そうだろニネット!生まれとかさ、母子家庭とかさ、そんなの関係なく救いがあってもいいじゃないか!クリスマスだぞ?クリスマスくらいそんな事があってもいいじゃないか!」  めったに弱みなんて見せない幼馴染が事もあろうに女の子の前で泣きわめく姿にニネット自身も大粒に涙を次々こぼしていた。  喉が痛くて声が出なかったものだからただ必死に大きく首を縦に振っていた。
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