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「だから一度、一度だけでよかったんだ。そう言う事が起こるんだって、一度だけでもそう言う事があったなら、世の中理不尽だけじゃないんだって思えるから…。」
ジャスティンは顔をぬぐった。
「でも、良い機会だ。確証もないのに信じ続けるって事は正直もうきついんだ…。だから今回の賭けで終わりにする。」
「だから… あんな無茶な賭けを受けたの…?」
ニネットが鼻をすすりながらようやくそう絞り出した。
「そうさ、サンタが本物の奇跡なら起こって見せろ。そうじゃないんならこの世に奇跡なんてないって受け入れていくさ。」
ニネットは相手の名を呟き、そして唇をかみしめた後身を乗り出して言った。
「私は、居ると思うよ。サンタさん。」
「どの道わかる。」
「じゃぁクリスマスの朝まではちゃんと信じましょう。居て欲しいじゃなくて居るって事にしましょう。私もそうするから。」
真剣な表情で見つめる幼馴染にジャスティンはバツが悪そうにこっくりとうなずいた。
「ごめん、ニネット。」
「いいの。だから笑って、ね?ジャスティン。」
ジャスティンは頭を掻いた。
「ちぇ、カッコ悪いな俺…。」
良いじゃないとニネットは笑った。
「どうせだれも見ていなかったわ。私もね。」
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