第三幕:大人達の夜

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 街に出たは良いものの、一体どこを探して良いものか見当もつかない。  ひとまず彼が夕食に使っていた店や、子供が立ち寄りそうな所に見当をつけてあたり始める。  まれに見る寒波は大人であってもこれほど厳しいものであるのに小さな子供だったらどれほど辛いものだろうとふと考えた。  凍てつくビル風に阻まれたり、積もったばかりの雪に足を取られつつうんざりする思いをしながら店を訪ねたりしてみたが、クリスマスイブのこの時間に営業している所など一つもなかった。  試しに息子の通う学校にも行ってみたが、門は固く閉ざされていた。  わずかな希望をかけて守衛に頼んでみたが、子供の出入りの様子は一切ないと断言されてしまった。  それでも母親が必死なものだから守衛は一応念入りに見回ってみることを約束してくれた。  氷点下の夜の中、楽しげなイルミネーションで彩られた都会の街をジャスティンの母親は爪先から頭のてっぺんまで痛みを伴う寒さに耐えながら歩いた。  手袋もブーツもイヤーマフも仕事を放棄したように手足の指先や耳などの末端が凍えすぎて痛みが酷くどこかで温めたかったが息子がそう言う目にあっていないかと思うとどうでもよくなった。
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