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鷹西は、路上に立ち、しばらく彼女の横顔を眺めていた。
彼は同じ県警捜査一課強行犯係徳田班に所属していて、夏美のすぐ上の先輩にあたる。
先日まで、徳田班は所轄に立ちあげられた捜査本部で活動していたので、2人ともその署の刑事とペアを組んでいた。
だから、2人きりになるのは久しぶりだ。
仕事なんだ、と自分を戒めながら、浮ついた気持ちになりそうなのを抑える鷹西。
やっぱり可愛いんだよなぁ、悔しいけど……。
ふと、彼女を抱きしめたときのことを思い出す。
あれは、どさくさ紛れだったからなぁ……。
「どうかしましたか?」
いつまでも外に立っている鷹西を、ウインドウを下げ運転席から見上げる夏美。
「い、いや、ずっと座っていたんで、ちょっと身体を伸ばそうか、と思って……」
彼女から視線をそらし、誤魔化すように背伸びをする。
「ふうん……」怪訝そうな顔をする夏美。「目立っちゃいますよ」
「そ、そうだな。はは……」肩を竦めると、慌てて後部座席に乗り込んだ。「ああ、腹へったぁ」
わざとらしく言って、さっそくおにぎりを頬張る。
バックミラー越しに、クスッと笑う夏美の顔が見えた。
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