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「挨拶は済んだようですね。ではそろそろこの惨状を見たほうが良いのでは?」
男はいつの間にか端の方へと移動していた。
見渡すと霧は大分消えている。永遠に続くような白い床は、男の立っている場所を境に途切れている。
ハルカの手を離し、男の後ろ姿から目線を離して右へと目をやると、そびえ立つ数メートルの柱が何かを守るように角に建っていた。
そのまま周りを見渡すと、四角く囲うように全部で四本の柱が建ち、その中心に俺とハルカは居た。ここは何かの祭壇や儀式の場所なのかもしれない。
俺は男の元へと歩むも、後ろからハルカが付いて来ないことに気付き、ハルカの元へと戻り、右手でハルカの左手を引っ張る。
行こうーーという意識を感じ取ったのか、ハルカは俺の歩きに付いて来る。
男の後ろでハルカの手を離し、俺は男の左隣へと並ぶ。
視界は霧が晴れていくごとに曇った空が広がり、下を見れば数十メートル下に地上が有った。この白い床と同じ作りのような薄汚れた小さな建物が密集している。
しかしそれに似合わない赤い血のような霧が見えた気がして、目に無意識に力を入れる。
視力は次第に上がっていき、薄っすらと道端に血痕が所々見えた。
それなのに、誰一人見渡せず、場所によっては物が倒れたり壊れたりしていた。
「何故ーー誰も居ない……」
俺はその景色の不快感に思わずそう呟く。
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