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「誰も居ないーーそこまで見渡せるとは、よほど良い目をお持ちなのか……いえっ、その黄色く光輝く目は【アタルヴァ】の力を目に回して視力増大しているのですね。記憶を失っても力の使い方は身体に染みついてるようですね」
男のその言葉に集中力が切れ、目に宿したアタルヴァを解く。
ーーそうだったな。アタルヴァは身体の力として肉体の強化や回復にも使える。
「さて、ご覧の通り君達以外に人は見当たらない。君達は捨てられたのかーー何かの悲劇に襲われて運良く生き延びたのか、君はどう思いますか?」
男の容赦の無い言葉に不快感を感じながらも、思ったことを言葉にする。
「この集落に居た者達が俺達を見捨てて何かから逃げたのなら結論がつく。マハーカーラという連中が目撃されたというのが事実なら、そいつらが襲撃したからだろう。俺とハルカはそれに巻き込まれて記憶を失ったのだろう……その話が本当ならな」
敵意を向けるように男に目をやる。
男はそれすらも口元を歪ませて笑(え)みをこぼす。
「疑うのも無理は無い。しかし問答は意味は満(み)たさないでしょう。此処での出来事を何も知らない私と、記憶も持たない君達では」
確かに、推測の押し付け合いにしかならない。
だがーーこれだけは言わなければならない。
「ハルカを孤独にさせ、この惨状を招いた奴がいるのならーー俺はそいつを絶対に許さない」
俺は憎しみと殺意を込めてそう誓う。
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