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「見つけた」
その言葉に、ビクッと反応してそれは“影”の方を見た。
「見つけたよ、“光”」
「なんで……」
「それはこっちのセリフだよ!なんで急にいなくなったんだ。“みんな”困惑しているよ」
「嘘ばっかり……」
「え?」
“影”は“光”の言葉の意味がさっぱり分からなかった。光がなければみんな困る。当たり前のことだ。唯一、“あいつ”を除いて……
「私、疲れちゃったの」
“光”がぼうっとしゃべりだした。
「疲れちゃった。ずっと居続けなければいけない。あちらこちらに。ずーっと、変わらずに。でも、あちらこちらにいるのに、誰にも“私”を認識してはもらえない。居て当たり前の存在。誰も“私”を特別に想ってくれない。それが悲しいの」
「そんなことないよ。少なくとも“僕”は、“君”が特別だ」
「嘘ばっかり……」
「なんでだよ、なんで信じてくれないんだよ」
「“私”がいない方がいいでしょ?ずーっと“あなた”の出番よ。いつも限られた場所でしかいられない、“あなた”がもっともっと活躍できるわよ」
“影”はようやく気づいた。
「“光”、勘違いしているよ。まさかそんな風に思っていたなんて……」
「勘違い?」
「影は、光があるところにしかできない。光がなければ、影はできない。“僕”は“君”がいないと存在できない」
“光”は、怪訝な顔で“影”を見つめる。
「今、“君”が姿を消して、辺りを覆っているのは決して“僕”じゃない。これは、“闇”だ」
「闇……?」
「光は闇を打ち消してしまうから、“闇”に会ったことがなかったんだね。よく間違えられるけど、影と闇は別物だよ。“君”がいなくなって喜ぶのは、“闇”だけだよ」
「“影”は、“私”がいないと存在できない……?これは、闇……?」
「そう。だから、“僕”にとって“君”は何者にも代えられない、特別な存在だよ。闇は“僕”だって怖い。飲み込まれてしまうから」
「“私”は……特別……」
「そう、だから、ほら戻ってきて。そろそろ夜明けの頃だ。暗いままだとみんなびっくりしちゃうよ。“僕”も存在できないしね」
“影”は“光”を優しく見つめる。
“光”も“影”を見つめ返す。
すると、“光”を中心に光がスーッと広がっていった。
「おかえり」
「……ただいま」
今日も影は光と共に。
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