冬の蟷螂

12/12
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
花壇の前で奥さんは 肩を落としてしゃがんでた、 二匹の犬が寄り添って・・・。 「寂しい・・・寂しいわ  親なんて・・・寂しい。  でも親なんだもの・・・  ずっとずっと親なのよ・・・・」 かすれた声がすすり泣きになり、 木枯らしが駆け抜けた・・・。 使い込んだ小銭入れ、 儚げな笑顔・・・ 幽かな・・・枯れた手・・・ あの日、娘の背中を追うように 見ていた哀しい瞳・・・。 幾百、幾千 言えなかった言葉を   身体に閉じ込めていたのだろうか。 花壇には化石のように 死に絶えたカマキリ、ひとり・・・。           ー 了 ー
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!