冬の蟷螂

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9月16日 月曜日 残暑が厳しい。 大学へ行く前に バイト先のパン屋で一仕事。 携帯と定期代プラス小遣い少しのため、 駅前のパン屋でバイトを始めた。 学校へ行く前と帰りに少し。 レジと陳列が主な仕事。 一ヶ月でお客さんもずいぶん覚えた。 その一人、 70過ぎくらいのおばあさんが 少し気になる存在。 彼女はいつも6枚切りの食パンを買う。 「210円です」 「有り難う」 ずいぶん使い込んだ小銭入れから 小銭を三枚・・・ その手がやけに 小さくて・・・儚げで・・・。 「パンの耳、オマケに入れますね」 奥さんはいつも彼女にだけ パンの耳をすすんで入れる。 もっとたくさん買ってくれる人も いるけれど、彼女にだけ。
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