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「だから、『そうかもね?』って言ったの」
「彼女がカサドラでもカサドラじゃなくても、俺、彼女に頭が上がらない気がしてきた……。あー……。それにしても、何故、俺よりカサドラの方が杏と結び付きが強いんだ……。いくら乳姉妹だったからって……。おかしいだろ、ソレ……」
少し拗ねたようにブツブツと文句を言ってる昴君を見て、思わず笑みが零れる。
(そう言えば、カサドラはいつも『私は、お兄ちゃんがアンジュが言うような”素晴らしく出来た人間”とは、到底思えない』って力説してたけど、こういうセラの姿を見てたのかも……)
私がアンジュで、彼がセラだった時は、有り得なかった光景だが、彼の新たな一面を見ることが出来て、より身近に感じられ、まるで新しい発見をしているようで、凄く嬉しく感じて、思わずくすくすと笑ってしまう。
「……ねぇ? 昴君」
「――――ん?」
「なるべく同じ大学に進学したいとは思ってはいるけど……。医学部と文学部だし、抑々、私と昴君では学力差もあるし……。もしかしたら、違う大学になっちゃうかもしれない。それでも、私とこれからも、ずっと一緒に居てくれる?」
「愚問だな。俺がどれだけキミのことを待って、捜したと思ってるんだ。……数百年だぞ。それに比べたら、例え、離れたとしても大学生活のたった数年なんて何の問題も無い。それに……」
「それに?」
「まだ『保留』の返事も貰ってないし。現役で受かったら、あと7年後に、もう一度聞くから」
「――――え!?」
「……そんなに驚くようなことか?」
ペットボトルの水の蓋を締めながら、昴君は不思議そうに尋ねる。
「……あ、そっか。7年って医学部は6年制だもんね。普通にいけば、私の方が一足早く社会人になるんだ……」
「……待たせてごめん」
「そんなの、貴方を何百年も待たせた私が文句言える立場じゃなくない? 昴君と一緒に居られるのなら、私はいくらでも待ちますよー」
冗談めかしてくすくすと笑いながら、そう言うと、昴君は少し周りを見渡して誰も居ないのを確認し、私の頬を右手で触れる。
そして、軽くキスをした。
「あのさ……。『いくらでも待つ』って……。正直、俺の方が、もうそれ以上、絶対に待ちたくないんだが……。ま、浪人と留年しないように頑張るよ」
「じゃあ、そろそろ休憩は終わりにして――――」
私はゆっくりと立ち上がって、軽く伸びをする。
「勉強するか」
公園に常設されているお洒落な形をした緑色のベンチから、昴君もそう言いながら立ち上がった。
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