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「あぁそうなんだ。間違えたのかな?」
「故意ですよ? ツユを飲んだ所長の反応が見たくて」
より悪質だった。
ふぅ。気を取り直し、湯気の上がる液体を一口いただく。
あっま! なんだこれ!?
「愛理くん。これってなに? 罰ゲームか何か?」
「いいえ、甘酒ですよ?」
表情を見れば分かるけど、今度はイタズラじゃなくて、本気のおもてなしのようだった。
「なんで甘酒?」
「だって所長、お米好きじゃないですか」
「……ああ、あれ……ね」
神米をお皿に移し、感謝を述べていたことを思い出す。(『人混み狂騒曲』本編参照)
ナイス・ライスとか言っちゃって、それを愛理くんに目撃されたんだ。
あれ以来、愛理くんはぼくのことをお米大好きな人と思っているらしく、しばらくは気を使って(?)そんな話ばかりしてくれていた。
──回想。あれはある日の午後。
「所長」
「うん? なんだい?」
「田んぼに水が張りましたね」
「……うん? そ、そうだ……ね?」
愛理くんが気をつかってか、変な話を振ってくれた。
「今年はいい天気が続くといいですね」
正直興味もないが、何か返さないと申し訳ない。
「近所の田んぼも、稲が二センチ伸びたそうでねえ」
「豊作になるといいですねー」
なにこの会話。探偵業と全く関係ないんだけど。
農協職員の会話じゃないか。
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