ベルの頼み事

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その日、ピートが郵便局に戻ってこれたのは、結局昨日よりも遅い時間でした。 一日分の配達伝票を整理し、回収した荷物と未配達分を各地区の棚に仕分けし、報告書を作成して、回覧の書類に目を通した後、ピートはようやく倉庫の奥の棚の前へとやってきます。 その棚は広い倉庫の一面に水平に並べられていて、宛先不明、転居先が分からないもの、受け取り拒否など、様々な理由で配達できなかった郵便物が隙間なく詰めてあります。 〝この中から手紙一枚を探し出すのは相当骨が折れるな。まったく余計なお節介をするんじゃなかった〟 自分の背丈の二倍はある棚を見上げながら、ピートは軽い弾みで出た言葉を悔やみます。 〝つい、弾みでいい格好をしてしまった。これで手紙を見つけられなかったら、ベルさんをまた悲しませる事になるな〟 ピートの頭に、鳶色の瞳を伏し目がちにしたベルの悲しそうな顔がよぎります。 「こうなりゃやるだけやるしかない」 ピートは気持ちを奮い立たせると、地区毎に区分けされた棚を目で追いながら歩きだします。 〝フローリスト・ベルは中央広場の3区だ。もし、何かの理由で未配達になっていたとしても、その近辺にはあるだろう〟 中央広場は街で一番栄えている地区です。未配達品の棚は中央広場地区だけでも五台もあります。ピートは各地区の棚についている小さい郵便物用の引き出しを開けて、ぎっしり詰まっている郵便物の宛名を一つ一つ確認していきます。
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