冬の彦星

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   __2019年12月20日。  __19時58分。  僕はキッチンのダイニングテーブルにガスコンロを置くと、その上に鈍色の土鍋をそっと置いた。  キャベツ。ニラ。豚肉。  ニンニクの入った塩味ベースの汁の中に、具材を交互に盛り付けていく。  そして彼女専用の桃色の取り皿を置くと、その手前には朱色の箸を並べた。 「……よし」    別に盛り付けや食器の配置を変えても、何の支障もないはずだ。  だけどこれは、僕の中で彼女を迎える儀式のようなものだった。  __ガチャリ。  と、玄関のドアの扉が開く音が聞こえる。  腕時計を確認すると、針は20時ジャストを差している。  ……変わりないな。  僕はホッとしながら振り返る。 「おかえり」  するとリビングに飛び込んで来た彼女は、あの日と変わらぬ笑顔を見せた。
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