8人が本棚に入れています
本棚に追加
__彼女は楽になれるのかもしれない。
そう思いながらも、僕はまた気づかないふりをする。
「まあ、無理しないようにね」
そして瞳を伏せながら小さく頷く彼女に、そっと微笑みかける。
“__今日もね、先輩に叱られちゃって。結果、残業になっちゃった”
だけど頭の中には、さっきの言葉が消えることなくグルグルと巡っていた。
……本当に仕事なの?
……本当は何してるの?
と、心の中で問いかける。
だけど結局、過去も現在も口にする勇気はないのだ。
「……明日は、残業にならないようにする」
と、微笑み返す彼女から僕は思わず視線を逸らした。
「……そうだね」
__明日。
それは、二人にとって訪れることのない未来。
僕は目の前でグビグビと缶ビールを飲み干す彼女を見つめたまま、重い口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!