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少し肌寒い。
うっすらと目を開けると視界が暗い。さっきまで聞こえていた蝉の声が虫の声に変わっている。
足元を照らす明かりが青白い。見上げると月と満天の星が僕を見下ろしていた。
僕は辺りを見回して驚いた。
ここはどこだ?
僕は小高い丘のようなところに立っていた。その下には海が広がっている。
何かが聞こえた。鳥か?動物の鳴き声か?それとも何かの楽器か?
「タケリ」
いきなり背後から声をかけられる。
僕は振り返った。
「舜くん」
目の前にルミが立っていた。頭からすっぽり布製の帽子をかぶり、戦時中のもんぺのようなものを履いている。農作業でもするのか。太陽はすでに空の高いところにある。
「わたしちょっと出かけてくるからさ、まだ寝てていいよ、炊事場に朝ごはん用意しといたから」
ハーレーのエンジン音が遠ざかっていく。
閉じた目の奥で、農作業姿の女がハーレーにまたがっているのを想像した。
なんともシュールな光景だ。
寝返りを打つ。僕の意識は薄れていった。
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