ジョー

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ジョー

心肺蘇生法だ。 目覚めた瞬間僕はつぶやいた。 あの時代にそんな方法を知っている人間がいるなんて、絶対におかしい。 「ルミ!」 僕は叫んだ。 早々に朝食をすませ、僕とルミはハーレーで出発した。 「で、今度はどんな夢だったの?」 僕は短く夢の内容をルミに話した。僕の関心はもはや縄文時代より謎の男にあった。 「きっとその人はもうタイムスリップに成功してるんだよ」 「じゃないと思うよ」とルミ。 「なんでだよ」 「会えば分かるよ」 ルミはスピードをあげた。 田んぼに囲まれたその家は緑色の屋根をした洋館だった。 それよりも度肝を抜かれたのが、敷地の入り口と思えるところに、何体ものマネキンが突っ立っていることだ。雨風にさらされたそれらは塗装が剥げ落ち、おどろおどろしい姿になっている。 ルミの言うところによると、この辺りは街灯がなく夜になると真っ暗になるため、目印と防犯のために置いているのだそうだ。 防犯?ルミの家は鍵さえかけないのに? 会う前からその人物の変わりようが分かるようで、不安になった。 ライオンの顔をしたドアノッカーをルミが鳴らそうとすると、いきなりドアが開いた。顔面を思いっきりぶつけたルミは両手で顔を押さえてしゃがみこんだ。 「ワアォ、ルミさんごめんなさい」 出迎えた人物は僕と同じ年くらいに見える青年だった。青年のルミに伸ばした手はあと少しのところで届かなかった。 代わりに僕がルミの肩に手をかけると、ルミは「大丈夫、大丈夫」と言いながら立ち上がった。 「ジョー、これが昨日電話で話した……」 「舜くんですね、よろしく勅使河原(てしがわら)ジョーです」 勅使河原の漢字を丁寧に説明する彼の顔は純日本人だった。 「名前は本当は譲二なんですけど、子どもの頃からジョーと呼ばれていますので、ジョーと呼んで下さい」 「ジョーはイギリス生まれのアメリカ育ちなのよ」 なるほど、帰国子女ってやつか、それでジョー。 「どうぞ中へお入り下さい」 ジョーは手元のスイッチを押すとくるりと向きを変えた。ジーッと電子音が鳴る。 ジョーの車椅子について僕らは家の中に入った。
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