白き花と夏の庭 14

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白き花と夏の庭 14

 横たわる律矢は、右手を抱え込むように押さえている。  なんてことだ!  そこからはドクドクと大量の血が流れていた。 「おいっ!どうしたんだ!」 「……信二郎か……くそっ。岩場でえぐってしまったようだ。それより夕凪は無事か! 」 「あぁ夕凪は大丈夫だ。それより手を見せてみろっ」 「うっうう……」  顔を歪め苦痛に耐える様子が、傷の深刻さを物語っていた。どんどん顔色が蒼白になっていく。 「とにかく人を呼ばないと! 」  その時夕凪の震える声がした。 「えっ……あ…」  意識を取り戻した夕凪が、律矢の様子に息をのんでいるのが伝わって来た。 「なっなんてことに……」 「夕凪、誰か人を呼んで来てくれ! すぐに助けが必要だ! 」 「わっ…分かった。律矢さんっ律矢さんの手は? 」 「いいから早く行けっ」  全身びしょ濡れで意識を失っていた夕凪に酷なことをと思ったが、今は道を知っている夕凪を行かすのが最善だと思った。 「おいっ! しっかりしろ!」  半身をまだ水の中につかったままの律矢をズルズルと岸に引きあげ、俺は持っていた風呂敷で律矢の腕を縛った。とにかく止血が先決だ。 「くっ」  血がどんどん溢れてくる。律矢の顔がますます蒼白になり、意識を失いそうになっている。 まずいな。かなり傷が深い。 「しっかりしろ! 今助けが来るから」  夕凪を介してライバルでもあった俺達だが、夕凪を愛したもの同士、妙な連帯感も抱いていた。だから……こんなところで脱落させるわけにはいかないのだ。 **** 「くっ……うっ……信二郎さん、律矢さんっ」  涙で霞んで、前がよく見えない。  何故! 何故……こんなことになった?  信二郎と律矢さんの顔が交互に浮かぶ!  何度か転びそうになりながら、俺はびしょ濡れのまま寺へと必死に走った。
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