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残された日々 9
【R18】
夜更け過ぎ。
覚悟を決めた俺は、誰にも見られぬように細心の注意を払い、兄の部屋に忍び込んだ。
「湖翠……」
もちろん返事がないのは分かっている。何故なら俺が抹茶に仕込んだ眠り薬によって、ぐっすりと眠っているはずだから。
さっき縋るように俺を呼び止めたあと、すぐに眠りに落ちたらしく、畳の上に倒れるように俯せになっていた。手早く布団を敷いてやり、横抱きに持ち上げるが気が付かない。
「薬がよく効いてしまったようだな。許せ……」
悩まし気な悲し気な顔のまま意識を失ったのだろう。目元には乾かない涙が溜まっていた。
そっと布団の上に湖翠を寝かしてやる。その安らかな寝息に、胸を掻きむしりたくなる。
「湖翠を泣かせたくなかった。本当に俺は……何故こんなことをしているのか」
後悔することになるだろう。
今から俺がすることは、湖翠を冒涜(ぼうとく)することだ。
この先の行為は、意識がない湖翠の躰に負担を掛けるもので、神聖なもの清浄なものを冒し、穢すことだと理解している。
それでも今生でせめて一度だけ、触れさせて欲しい。
湖翠が俺を求めていた清らかな想いを踏みにじってしまう。それでも……欲しい。言い訳を繰り返しながら、俺は湖翠の着衣を乱していく。
露わになるのは清らかな若い肢体。
湖翠の躰は想像通りとても美しかった。
上半身……それから下半身もすべて露わに剥いてしまう。
これまでも風呂場などで裸を見る機会はあったが、今目的を持って接するのとは訳が違う。
闇夜に浮かび上がる清純な躰に、感嘆の溜息が漏れてしまう。
「湖翠……綺麗だ」
優しく口づけを施す。
そのまま愛したかった躰を愛撫していく。
そっと全身に口づけを繰り返していく。
やがて……眠っているはずの湖翠の躰も、うっすらと赤く染まっていく。躰の中の熱が高まっていくように、淡く皮膚が色づき、汗ばんでいく。
夢中になった。
痕を残してはいけないと思うのに、きつく吸ってしまった箇所もある。
ずっと湖翠を欲しかったのは、本当は俺の方だった。
そう確信できるほど、俺は湖翠の躰に欲情していた。
貞淑な乳首を舌先で舐めてやれば、誘われるように立ち上がる。
湖翠は未だ夢の中だ。
なのに……まるで俺の愛撫に感じてくれるような反応をしてくれる。
もう止まらない。
一度触れてしまえば抑えが効かなくなることは分かっていたはずなのに。
俺は馬鹿だ。
湖翠ともっと早く健康な時に触れあえばよかった。いやそんなことをしたら辛い思い出が残るだけだ。
これでいい。こうするのが最善だ。
これは誰のための行為なのか……決して湖翠のためではない。
俺の利己的な我が儘で、湖翠を汚すのだ。
今から……
ツンと俺に向かって乳首が主張を始める。
そこを丹念に舐めてやると、意識がないはずの湖翠のものが勃起しだしてきた。
胸が熱くなる。
兄弟の柵なんて、今は置いて行こう。
優しく勃ちあがってきたそれを口に含み、舌先を使い、竿から亀頭を優しく撫であげていけば……
「あぁ……」
吐息交じりの甘い声が、初めて湖翠の感じる声が聞こえた。感じてくれているのか。俺の愛撫に……そう思うと胸が熱くなった。
「湖翠……」
呼びかけるが返事はない。意識が戻ったわけではないのだ。深い眠りの底にいるのだ。
だが確実に俺の愛撫に応えてくれている。
もっともっと声が聴きたい。
そんな想いで舌で吸い上げることを繰り返すと、腰が震え悩まし気な声が漏れる。
「うっ……ん…ん」
やがて苦いものが喉奥にぴしゃりと迸ったので、迷わず嚥下した。
これは湖翠の命の味。
それから持参した油を奥の入り口に丁寧に塗り、指先を潜り込ませて丹念に広げていく。
これは湖翠を犯す行為だと、頭では理解している。
もうここまでだ!ここでやめろ!
もう一人の俺が頭の中で警告してくるので、一瞬手が止まってしまった。
そうだ、これは犯罪だ。
もう、ここまでにしよう。
そう思って俺は名残惜しい気持ちを残しながらも、湖翠の躰から必死に離れた。
ところが……
「……だ……めだ、やめないでくれ……」
寝言のようにうわ言のように、湖翠が俺を呼ぶなんて!
「流水……いく……な…」
あぁ……そんな切ない声で呼ぶな。
俺の下半身の血がかっと熱くなるのを感じだ。
もうこのまま……湖翠の躰の中に入り込んで、俺の精を放ちたくなる!
どうしたらいいのか。
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