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嫉妬 2
粉おしろいの匂いを放つ、むせ返るような白い肌。
ねっとりと紅のついた唇。
蝋燭の灯りに見隠れする……たわわな乳。
「どうなさったの? さぁ早く抱いてくださいな」
蠱惑的に誘う柔らかな女の躰を横目で眺めながら、酒をまたグイっと煽った。
早く酔ってしまいたい。もっと酔って何もかも忘れたい。
「さぁどうぞ、お好きになさって」
女がじれったそうに、ふくよかな胸を押し付け、胡坐をかいた下半身を細い指で弄ってくる。
くそっ! もう、どうにでもなれ!
酔っておぼつかない手で女の着物を一気に気崩し、押し倒して……そこからは夕凪と出会う前の私がよくしていたことをするだけ。男の欲望のままに精を放つだけ。
「あんっ……いいわぁ……すごく素敵よ……」
女の声がどこか遠くに聞こえる。
その一方で私の躰に絡みついてくる細く長い手と足は、蛇のように蠢いていた。
昔は魅力的にも思った女の躰に靡かない。
躰は生理的に反応するが、心が動かない。
どれも清楚で品のある夕凪とはかけ離れていて、それが私を惨めに貶めていく。だがここまで来て引くに引けず、男の性には逆らえず……結局何度も突き上げ、抱いてしまった。
私は夕凪でなくても勃起するのか。
誰でもいいのか……
抱けば抱くほど虚しさが募る。快楽と苦渋は紙一重なのかと思えるようなやり場のない営みを繰り返し、やがて朝を迎えた。
「ふふ……あなたすごく良かったわ。見かけによらず激しいのね。ねっまたいらして。次はいつ?あなたのこと、気に入ったわ」
「……もう来ない」
「えっ? 」
朝になり正気になれば、後悔が募るだけだった。
律矢が来ているからって、遠慮することはなかったのではないか。
前のように私も加わり、共にふたりで夕凪を愛せばよかったのではないか。
そうだ……認めよう。私は嫉妬している。敵わない二人の血縁というものに。
「風呂に入ってくる。代はここに置いておくからな」
私は着物を掴んで足早に風呂場に行き、女の痕跡を綺麗に洗い流した。
残香が不快だった。
気持ち悪いとさえ思った。
後悔だけが残る一夜だった。
早く宇治へ戻ろう。
早く夕凪の元へ帰ろう。
****
障子が白い光をふんわりと放っている。
あぁ……もう朝がやってきたのか。
俺はいつの間に眠ってしまったのか。
どうやら律矢さんに抱かれ続け、気を失ってしまったようだった。
嵐のように激しい一夜だった。
数か月ぶりに律矢さんに抱かれた。
祝言をあげてから、律矢さんは流石に頻繁に宇治に来ることが出来なくなっていたので……本当に久しぶりだった。
俺を求め続ける律矢さんに翻弄されながらも、ひどく淫らに感じ、悶え続けたのが俺だ。
それにしても温かいな。律矢さんの寝息が、規則正しく首筋にかかってくすぐったく感じだ。それに……あっ……まさか。下半身がまだ温いのは……律矢さんのものが挿入されたままなのか。途端に猛烈に恥ずかしくなり、身を捩って抜こうと試みた。
「あっ……嫌だっ」
ところが腰を突然ぎゅっと掴まれ、動きを止められてしまった。
「んっ夕凪起きたのか」
「律矢さん、こっこれ抜いてください」
「あぁ、挿ったままだったのか。くくっ俺もまだまだイケるな」
「なっ!」
抵抗しようとすると、そのまま伸し掛かられ唇を塞がれてしまった。官能的なキスを息が止まる程され、頭がぼうっとなる。
それが下半身に直結しているようで、蕾の奥がビクンと震え律矢さんを締め付けてしまう……すると挿入されたままだったものが、再び硬さを取り戻すのを、己の躰の中でしっかりと感じてしまい驚いた。
「えっ……なんで」
シーツに仰向けに縫い留められ、そのまま着崩れた浴衣の袷から手を差し込まれ、散々弄られた立ち上がった乳首を指できゅっと摘ままれる。
「夕凪の中で朝まで過ごせたなんて光栄だな。あぁ、また大きくなってしまったよ」
「んっ……駄目だっ。もう明るいっ」
こんな白々しい朝日の中で抱かれるのは……不慣れだ。
だって……全部、全部、丸見えじゃないか。
男の躰。
男の顔。
律矢さんの奥様とはまるで違う躰を……
「夕凪……どうしてだろうな。お前を抱くのに飽きることはない。抱けば抱くほど愛おしくなる。離れがたくなるのは何故だ」
律矢さんのいつになく真剣な眼差しを受けると、恥ずかしくも嬉しくもあった。
だが……俺だけの律矢さんでは、もうない。
もう独占できないのが寂しく感じる瞬間でもあった。
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