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紅をさす 7
「やっぱり無理だ……こんなこと」
「怖いのか」
少し冷静さが戻ってきてしまったのか、夕凪が真顔で拒否し出した。ふぅ今更それはないだろう。 困った奴だ。
しかしなぁ…… まじまじと夕凪を見ると、上半身は着崩れて綺麗な肌を露わにさせ、胸の突起は高揚し色づいて、ツンと立っている。こんなにも乱れた艶めいた姿で今更やめろと言われてもな無理だ。
甘ちゃんだよ。夕凪は……まったく。
「ふぅ、やっぱり夕凪らしいな。ここまで許しておいて、そんなこと言い出すなんて」
「当たり前だ! こっこんなこと、誰がしていいと? 」
「ふっ……やっぱり老舗の若旦那のプライドが邪魔しているのだろう? 」
「そっそんなことない…俺はそんな堅苦しい男ではない! 」
「そうかな」
「お前こそちゃんとした絵師かと思っていたのに、何で急に俺にこんなことを……」
「ふっ、ちゃんとしたってどういう意味だ? 今まで紳士的だったか」
やれやれ、すっかり酔いが覚めてしまった夕凪をもう一度酔わさないと、この続きは出来そうもないな。 ふと目をやると、机の文箱の横に墨と筆が置かれているのが見えた。
「夕凪の筆を借りてもいいか」
「いいが……何に使うんだ? 」
私が筆を取りに行っている隙に、夕凪はベッドから起き上がり着崩れた長襦袢を慌てて直そうとしているので、その手を止めた。
「夕凪、まだ着なくていいよ」
「なぜ? 」
「筆で描いてやるよ」
「はぁ……えっ絵をどこに? 」
「君の躰にだよ」
「えっ遠慮する!」
途端に顔を真っ赤にして逃げようとする夕凪の手首を捉えて、腕の中に閉じ込める。
「私は絵師だ。筆さばき見たくないか」
「信二郎! お前って奴は!」
筆を持つと自然と手がしなる。 描きたい! 勝手に手が動き出すようだ!
「夕凪、大人しくしろ」
逃げようとする夕凪をベッドに押し倒し跨いで押さえ込み、その白い滑らかな背中へと一気に筆を下ろす。 最初は墨は付けずに筆だけで刺激してやろう。 そんな意地悪なことが頭に浮かぶ。 夕凪の若旦那らしく振る舞う、その澄ました顔を崩してやりたい。
肌に筆先が触れるか触れないかの距離で背中をなぞってやると、夕凪がぞくぞくと震え、艶めかしい声が小さくあがった。
「くっ」
「おいおい……夕凪まだ触れてないぞ」
「やっやめろ! 」
恥ずかしさから震える夕凪が必死に抵抗するが、その手を後ろ手で押さえ、更に筆を走らせる。
「ああっ!」
耐えきれない声が耳に届くと、苛めてやりたい気持ちがどんどん高まってしまう。
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