部屋の隅の住人

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 そんな行き場のない怒りを抱えていた僕のもとに、友人から桜田さんが警察に捕まったと知らされたのは事件から三日後だった。                             どうやら自分に気のありそうな男の部屋を訪ねては、男が席を外している隙きに金目の物を盗んでいたという。  万年金欠の僕だったが、その日は生活費をタンスに入れていた。だからもしあの時、桜田さんを部屋に上げてジュースでも買いに走っていたら盗まれていたかもしれない。 もし盗まれでもしていたら、僕は今月無一文になっていたはずだ。ある意味で不幸中の幸いと言わざるを得ない。  溜飲を下げた僕が部屋に帰宅すると、疫病神が暑い部屋の隅に佇んでいた。 「……やり方は酷いけど、ありがとう……」  聞いているかも分からないし、返事もないと分かっていたけど、僕は疫病神に向かって小さく呟く。  案の定、疫病神は何の反応も見せずに、ただそこに佇んでいるだけだった。  でもその日以降、家に宗教勧誘が来たり押し売りが来ると、アクティブに皿が飛んで壁にぶつかって割れたり、電気が点滅を繰り返すようになった。  お陰でビビった訪問者は、尻尾を巻いて逃げ帰っていく。 「皿は勘弁してくれよ……買い直すのも大変なんだから」  破片を拾いながら僕は呟いた。助けてくれるのは有り難いけど、これでは皿が何枚あっても足りない。  僕の呟きを聞き入れてくれたのか、電気は点滅しても皿は飛ばず、水道が勢いよく出るという怪奇現象に変わったのだ。  それでも、本当は困ってる。  疫病神との生活にも慣れ、出て行って欲しいと言えなくなってしまった僕の心の変化に――
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