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本当は困ってる。
家賃を払うわけでも、家事をしてくれるわけでもない。
ただ部屋の隅に佇んでいるだけの存在。
ソイツは黒いローブを着て、フードを目深に被っていた。顔は見えないから正確な性別は分からない。でも、背の高さや体格からして男のように見えた。
だから僕はソイツの事を疫病神と呼ぶことにした。
見た目がそれっぽいというだけで、不幸が起きたり悪戯されたしたりしたわけじゃない。だけど何もしないからといって、厄介である事には変わりなかった。
疫病神がいつからそこにいたのか。それは僕には分からない。気づいたら当たり前のようにそこにいた。ずっと部屋にいるわけではなく、時々現れて部屋の隅に立つ。
もしかすると、事故物件を掴まされたのかもしれない。そう思った僕は、不動産屋に問い合わせたりもした。でもそんな事例はないと言って、ちゃんと取り合ってはくれなかった。
それに僕は貧乏大学生だ。そう簡単に引っ越せるはずもなく、この疫病神と共に暮らしていくしか選択肢はなかった。
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