3人が本棚に入れています
本棚に追加
side:死神
落ちろ――堕ちろ――墜ちろ
声が響く。
頭の中でこだまするその声はひどく不吉な響きを持っている。
この声に耳を貸してはいけない。
本能がそう告げるが、声は鳴り響く。
――汝、永遠の眠りにつくがいい
――深い、深い眠りの世界へおちていけ
意識が朦朧としてくる、いけない、このままでは…
頭で理解しても、もはや身体が言うことを聞かない。
ひしひしと冷たい闇が迫ってくる。
――汝の罪が裁かれる、その時まで
――深い、闇の底へと堕ちていくがいい
声は鳴り響く。
それは甘く、優しく、絡みついてくる。
――決して目覚めることなかれ
――永遠の奈落の底で、永久の眠りへと堕ちていくがいい
――汝に神の裁きがくだるまで
脳裏によみがえるのは、大切な友の顔。
許して欲しい、この身の運命は、すでに決められているのだ。
――その身を眠りの闇にゆだねるがいい
この身は、果てしなく続く奈落の底へと堕ちていく。
全てが闇に塗りつぶされた。
***
――声が、聞こえたんだ
あいつの声が――
何もない。
上も下もわからない、深い闇の中で。
どのくらい時間がたったのか、わからなくて、気が狂いそうだ。
何も見えない、手をかざしてみても何も見えない、ただ無限の闇がそこにはあった。
自分が本当に実在しているのかも疑わしい。
俺という存在は消えてしまったのだろうか――
だって、何も見えないんだ。
手をかざしているハズなのに、前にあるはずの手が見えない。
闇に飲まれていく、自分の身体が、闇に溶けて消えていく。
自分という存在が闇に飲まれて消えていく。
わからない。
俺は一体何者なんだ……?
誰か、誰かっ……?
叫んだ。
でも、声はでない、声が聞こえない。
闇が重たくまとわりつく。
嫌だ、こないで、怖い、闇が怖い。
誰かっ……!
――――――「 」
……誰?
――――――「 」!
……それは、俺の名前……?
――――――「 」!!
光が、見えたんだ、初めは小さな、でもとても暖かい光が。
とても力強い、光が見えたんだ。
そう、おまえが、俺を呼び戻してくれたんだ。
『 』俺の大切な友。
***
最初のコメントを投稿しよう!