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『そぉ? むぅ、残念だわぁ。んふ♡ でもぉ、やっぱり可愛い♡ 流石にぃ、面と向かって振られちゃったから連れて帰るのは諦めてあげる。叡雅も怖いしねぇ。…えぇ、とっても』
諦めてくれた? こんなに簡単に? …叡雅さん、怖いの?
「ありがとう、ございます…?」
『んふふ、どぉいたしましてぇ♡ 淡雪ちゃん、ほんとぉに憐れで可愛いわぁ…。あの叡雅にぃ捕まっちゃうんだものねぇ』
「…叡雅さんは、とても、お優しいです」
『ふふ、そぉね。優しくてぇ、穏やかで、ゾッとする程残酷♡ いっそ惚れ惚れするわぁ』
残酷? あんなに優しくて、安心するのに。嘘だろうか。
『あぁん、もぉ、そんな不思議そうなお顔はだぁめ♡ 可愛がりたくなっちゃうもの』
「え…と……」
『───傾月、何をしに来た』
背筋の凍るような冷たい声。なのに、私の視界を遮る手のひらはとても優しい。
少し、本当に少しだけ、叡雅さんの声が怖くて、叡雅さんの袖をつまむ。
『あらぁ、何って、その子を愛でに来ただけよぉ? それにぃ、さっき淡雪ちゃんに振られちゃったから連れていかないわぁ。とぉっても残念だけれど♡』
全く、見えないけれど、私にでもわかる。残念ではなさそう。声が弾んでる。
『やけに楽しそうだが、何を企む?』
『ただぁ、淡雪ちゃんと遊びたいなぁって♡ んふふ、いいでしょお?』
『駄目に決まっておるだろう』
『けち』
『けちも何も。今が最も重要な時期であると言うのに』
『あぁ…』
…? 何に、納得してらっしゃるのだろう。
「叡雅、さん」
『ん?』
『あらぁ、甘ぁい…』
『言ってご覧、淡雪』
…良いのだろうか? でも、促されてる…よね。
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