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序
二十一世紀、某日某所にて。
とある材木採取現場で、不可解な事故が発生した。
専門の業者によって適切な手順で進められていたにもかかわらず、切り出した材木があられもない方向に倒れたのだ。
本来なら間違っても材木が倒れる方向ではないはずの、安全な場所。
当然逃げ遅れた作業員は下敷きになり、命に別状はないものの数名が重症となり、作業は一時中断となった。
後日、事故の原因を調べていた調査班の報告で、現場には作業前に邪魔になるからと移設された出自不明の祠の様な物があった事が判明。
作業員の内何名かが「4~5メートル程の大きさの半透明の何かが現場で暴れていた」と証言している事から「山神の祟り」と言った非現実的なゴシップに発展してしまい、その後原因不明のまま調査は打ち切られてしまう。
後日、別の業者が同現場にて材木の採取を行ったが特に何の事故もなく、この事故もオカルト系特番のネタとして使い古されていくだろう。
しかし、この時期を境に世界各地で同様の現象、「祠の破壊と巨大生物の目撃例」が徐々に件数を増していた。
一つ一つの証言は余りに小さく、それとわからなければ関連性も見出せないそれらは、少しずつ、世界を蝕んでゆく。
まるで精巧に組み上げられたカラクリから、歯車を支える螺子を少しずつ抜いていく様に。
全体のバランスが取れている内は崩れはしないが、ある一線をこれれば一斉に瓦解する。
そんな未曾有の危機は、人類の知らぬ間に迫っている。
世界の限界まで、あと少し……
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