でろん妓

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「未使用に近い美品です、環境に優しく身体の芯まですぐ温まる。安全快適お部屋の暖房はこれで決まり!!」  そうだ、もっと狭い環境だったならばコイツももっと私を温めてくれた筈なのだ。私たちが熱く過ごすには、あまりにも環境が悪過ぎたのだ……  私はネットオークションのコメント欄に一通りのことを記入してから、すぐ脇に目を落とす。  そのオイルヒーターは、私が最初買った箱の中にまた収まっていた、そしてひっそりと待っている……次の(あるじ)を温めるその時を。  私は妻に会わねばならない。  妻の部屋に行き、こう言わねばならない。  心は張りさけそうだが、言わねばならないだろう。  そのひとことを。  それでなければ……私は、凍えてこの命、終えるであろうから。 「ゴメン、やっぱりその石油ファンヒーター、居間に戻そう?」
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