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チーズトースト
「腹減ったな」
透哉がボヤき時計を見る。既に夜の十一時を回っていた。
「何か食べるものあったかな」
真矢が読んでいた本を置き、立ち上がる。
「食パンくらいしかないな……」
真矢が食パンの入った袋を手に掴む。
「そもそも何で食パンがあるんだ?」
「僕がバイト先で昨日貰ったんだ。『廃棄になるから持って帰って食べな』と」
「じゃあ賞味期限が切れてるんじゃないか?」
「賞味期限的には大丈夫みたいだ」
「じゃあどうして廃棄に?」
「どうしてもパンが硬くなってしまうかららしい」
「なるほどねぇ。美味しいモノに拘るってのも大変だな」
「で、どうする? チーズトーストぐらいなら作れるが」
「お、いいねぇ。是非お願いしたい」
それを聞くと真矢はチーズトーストの準備を始める。
オーブンで焼くこと数分。
取り出すと、焼けたトーストと溶けたチーズの匂いが部室に広がった。
「いいねぇ! 夜食って感じ」
「温かいうちに食べよう」
「美味ぁ~。 なんでチーズ乗せて焼いただけなのにこんなに美味しいんだろうな」
「そうだな。僕は部室という場所と、深夜という時間的条件が美味しさに補正をかけているんじゃないかと思っている」
「俺はそれに更に空腹という条件も付け加えさせて貰うぜ」
「パン自体も良いものだから、そのお陰もあるだろうな」
「もう食べ終わっちまった」
透哉が空になった皿を真矢に見せる。
「もう一回分なら作れるが、どうする?」
「もちろん、もう一枚だ!」
「では僕もおかわりしよう」
「今度はピザ風とかどーだ? ケチャップあったろ」
「それもアリだな」
部室の夜は更けていく――。
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